長男が十数年間、ひきこもり生活を続けている松江みやこさん(仮名)=4月、京都府(小川恵理子撮影)
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 インターネット通販で購入した商品の空き箱に、夜中にごみ置き場から拾ってきた古本や廃棄物の山。40年以上、家族と暮らしたわが家にはもう、足の踏み場もない。

 「お前のせいでこうなった」。京都府の松江みやこさん(73)=仮名=は、十数年のひきこもり生活でごみの山を築いた長男(42)から、幾度もなじられてきた。

 「息子はもう私の言うことを聞かない」。こう嘆く半面、「病弱だからと甘やかしてきた私も悪いんです」と自分を責める。

 夫と長女、長男との4人暮らしだった。約20年前に亡くなった夫は、子供たちに厳しく、特に長男との間には深い溝があった。

 そうした家族関係もあってか、長男は幼い頃からおとなしく、小学校ではからかわれることも。中学では周囲と関係が築けず休みがちになり、志望高校の受験に失敗。入学した高校は進級できず、中退した。

 その後自宅にひきこもりがちになった。一時、ひきこもり支援に取り組む市民団体の協力で、精神障害者の就労支援所で事務員として働きはじめたが、職場近くでトラブルを起こし退職。30代になると、ほとんど家から出なくなった。

■平成を象徴する問題

 全国の40〜64歳のうち、推計61万3千人がひきこもり状態であることが内閣府の平成30年度の調査で分かった。内閣府が27年度に実施した調査では、15〜39歳の若年のひきこもりは54万1千人と推計された。

 ひきこもりが社会的な問題になったのは平成の始めごろ。当時は、10〜20代の若者の間で指摘されていたが、平成の約30年間でひきこもり期間は年々長期化。今回の調査結果で、ひきこもりの当事者は中高年の方が深刻であることが判明した。

 子供が年を取れば、親も高齢化する。80代の親と同居し、ひきこもる50代の子の家庭が増加し、周囲から孤立するケースがあり、「8050(はちまるごーまる)問題」と名付けられている。

 名付け親で、大阪府豊中市社会福祉協議会の勝部麗子さんは「高度経済成長期に働いて年金がある親を、バブル崩壊のあおりを受けた無職の子が頼ってひきこもる。この30年間で生まれた、平成の時代を象徴するかのような問題だ」と指摘する。

■「母親に依存」

 十数年前に松江さんの長男は病院で鬱病と診断された。月1回のカウンセリングでは、心にたまっていることを言うよう促されると、幼い頃の記憶を思い返しては鬱憤を晴らすかのように、
同席する松江さんを責め立てた。その後、統合失調症の診断も受けた。

 子育てへの後悔や諦めの気持ちから、長男に従ってきた松江さんだったが、今年3月に一つの決断をした。相談していた支援団体の代表に「母親に依存している」と指摘され、一時的に関わりを絶つため、家を出た。

 自身の障害年金と松江さんの年金を頼りに生活する長男から時折、金を無心したり、不満をまくしたてたりする電話がかかってくるが、最近は出ないようにしている。

 まだ先は見えないが、長男から離れることで何らかの光明が見つからないかと願っている。松江さんは「母親としてはふがいないが、限界だった」と胸の内を明かし、「私が死んだ後、
あの子はどうなるのか。せめて人には迷惑をかけないよう生きてほしい」と憂う。   =(中)に続く

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 これまで社会に埋もれていた中高年のひきこもり問題。現状と課題、解決策を探る。

【用語解説】8050問題

 中高年のひきこもりが注目を集め、80歳代の親と50歳代のひきこもる子供の家庭になぞらえた言葉。高齢の親の年金などの収入で暮らすケースが多い。
自室でほとんどの時間を過ごし、家族以外との交流を持たず社会参加しない状態を示すひきこもりについて、厚生労働省は原則的に、その状態が6カ月以上続くという基準を設けている。
他人と関わらずに趣味や近所への買い物などで外出していても含まれる。

産経WEST 2019.5.13 17:37
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自殺するのは勝手だが迷惑かけるなよ鈴木ドイツ(58)