大坪清(26)2009年問題 派遣全1000人を正社員に 強まった結束 コスト増カバー
ttps://www.nikkei.com/article/DGXKZO57263180W0A320C2BC8000/
 09年4月に「派遣の正社員化」を始めると発表すると、経済界やマスコミから大きな反響があった。
1000人の正社員化は「大変な出費」と心配される向きも多かったが、コスト増は4億〜5億円。この程度
なら社員のモチベーション・アップ(士気高揚)による生産性向上で十分カバー可能と私は踏んでいた。
 実際「派遣の正社員化」以降、段ボール加工のロス率がみるみる改善した。

 予想外の効果もあった。生活基盤が安定した旧派遣社員が次々に自宅を建て始めたのである。
正社員になると会社の住宅購入補助制度が使え、さらに銀行でローンも組めるようになる。派遣契約
では若者が結婚もできず、それが社会問題にもなった。彼らは正規雇用になったことで家族を持ち、
さらに自分の家を建てるようになった。北海道や九州で住宅購入補助制度の申請が続いていると聞き、
ささやかながら地域経済活性化にも役に立ったかなと思った。
 家族といえば、06年に増額した出産祝い金も話題になった。それまで1人目が1万円、3人目が5万円と
いった制度だったが、これを1人目が2万円、2人目が5万円、そして3人目以降は1人につき100万円に
引き上げた。
 この制度改定を検討した会議では当初「3人目は30万円に」「いや、やり過ぎ。10万円でいい」といった
議論だったが、私がつい「みみっちいことを言うな。100万円くらい出したらどうや」と口を挟んだら本当に
そうなってしまった。効果はてきめん。3人目以降の祝い金はそれまで年10人程度だったのが、一気に
30人くらいに急増した。
 一人100万円で30人なら計3000万円の出費。個人なら大金だが、会社としてその程度の負担はたいした
ことはないと私は考えている。それよりも子供が増えて「やるぞ」と勤労意欲を上げてくれる方がはるかに
望ましい。
 社員にインセンティブを与え労働の価値を引き上げることが、結果として企業の持続的な発展に結びつく。