黒田日銀を問う /1 政策成功、路線継承を 米エール大名誉教授・浜田宏一氏
https://mainichi.jp/articles/20171115/ddm/008/020/089000c

−−2%目標達成はこだわらなくていいということですか。

 ◆経験則で、物価上昇が少しあった方が完全雇用が達成しうるといわれている。米国も欧州も2%目標を
掲げている時に日本だけ1%だと、(米欧と日本の価格差を調整するために)普通なら円が上昇してしまうので、
2%目標はあった方がいい。ただ、雇用と生産が保てるなら、こだわる必要はない。補助的な目標でいい。

−−黒田総裁就任後、日銀は世の中へのお金の供給量を3倍以上に増やしましたが、物価は上がりませんでした。

 ◆円安が進み、人々の物価上昇期待が高まるなど、量にもいろいろ効果はあった。だが、(2014年の)
消費税率引き上げ(による景気落ち込み)や原油安もあって物価が下がった後は、上昇期待が出て
こなくなってしまった。さらにAI(人工知能)の発達で多くの人が淘汰(とうた)の対象になる。
AIに取って代わられる人の賃金が上がるはずもなく、物価も上がりにくい。

−−日銀は今後どう動くべきですか。

 ◆失業率は非常に低く、金融緩和を強める必要はないだろう。米欧の中央銀行は金融引き締めで
金利を上げる方向にあり、日銀が長期金利をゼロに据え置けば、(高金利の海外にお金が流れて)円安になり、
インフレが襲ってくる。いずれ、金利を上げる時期が来る。逆に雇用に陰りが出れば、追加緩和が必要だ。
ゼロ金利の下では、ただ量的緩和を強めるだけでなく、財政出動も行うことで効果を高めるべきだ。