何か欠陥が出てくると,「それは規制緩和が不十分だから起きるのだ」という話になり,
「とにかく市場にすべて任せろ」と主張する。まるで逃げ水を追っているようなもので,
彼らにとってはどこまで規制緩和しても未完成なのです。
 (中略)
それでは人々が,日々の仕事でささやかな日常を支えている市井の人々が,
幸せになるためには,どうすればいいのか。
はっきり言えることは,「人を市場に合わせる」のではなく,
「市場を人々に合わせて調律する」ことをしていかねばならないということです。
規制とは,そのためにおこなうものです。
 (中略)
規制という言葉が悪ければ変えればいいので,私は「市民社会的制御」という言葉を
使っています。
 (内橋克人『悪夢のサイクル』文藝春秋p.178)