コップの泡が渇きを逆なでていて、引き裂くような鐘が延々街に降り注いでいる
「もう天使は来ない、きっと大事な約束なんて忘れてしまっているだろうから」

悲しくないよ全然
本当?それなら良かった

遠くでやわらかな声がする
豆のスープを啜りながら、窓の外に傾く耳を切り落とせたらと考えていたのかも知れない

足元で葉巻色の犬が寝息を立てていて、ページだけが、ぱらぱらと遊んでいる

幾つかの文字を上手く拾い上げれば、鍵の在り処には気付けるのだろうけど、どうしたものか
無造作に置かれた封筒の数だけ、順々に色が消えて行くのが、随分と心地好かった

過ぎて行く足音の記憶をそのままにして、膝頭に頬を押し付けた
行儀の悪さを叱る声は胸の隅っこが覚えているのだろうと考えれば、心は軽かった
スープの皿の縁を真向かいに差した

転げ落ちた万年筆を何時間も見つめている自身が嘘そのものであるのならと、
時々、目頭を押さえて深く吸い込んだ