長文だとこんなん

【黒焦げの手の平で仔犬を抱え上げた日】

心の半分に抗えない、火傷のような手招きが見え隠れしていて
もう半分には果物を頬張る小さな男の子が、佇んだままじっと此方を窺っている

川魚は影に散ったり、また集まったり
落ちた葉っぱの波紋と陽光とが聞こえるように内緒話を続けている
市場までの石畳を荷車が駆け抜けていくみたいに

もしも女の子に生まれていたのなら?
うん、きっと凄く仲良しになれてたよね

白紙が散らばってる古いアパートに垢だらけの老人は暮らしていた
飛ばない紙飛行機をもう、3日間も折り続けてる息子の夢を想いながら

何かの合図なのだろう
インクの瓶を指で弾いた後に、トントンとテーブルをふたつ鳴らす