――なるほど。ダイジェストでカッコイイポーズや綺麗な顔を切り取るのでなく、作中の時間軸の中で丸ごとそのキャラクターを理解し、
表現したいという志をお持ちなのだと理解しました。お話を伺っていると、お二人とも演出的な領域に深く入り込んだ作画を志向されて
いらっしゃいますね。映画全体を見渡した上で、そこに適した演技を考え抜いて描くという。

稲村 映画を作っている以上、アニメーターは演出を理解する必要があります。同時に、個々のキャラクターを理解して、なりきる
ことが出来なければ「どういう絵を描くべきか」という方向性が定まりませんから。仕草の一つ一つをどう描くのか。そこで悩んだり
苦しんだりするわけです。

安藤 その通りですね。最善の方向を探りながら描いていく感じです。ただ、自分は最終的には監督に貢献するのでなく、作品に貢献
したいと思っています。むしろ演出の方向が違っていると思った時は、作品の方向性を見据えて「違うのではないか」と進言出来るよう
になりたいですね。作画監督というのはそういう仕事なのではないかとも思います。