>>60の続き
北海道の札幌に着いた時には夜中で、終夜営業の喫茶店に入って朝を待った。
その時に野口氏は「もし死に切れなかったら結婚しないか」と言った。
そんなことは絶対にないと確信していた岡田史子は「いいよ」と返事をした。
朝になってバスで札幌郊外の温泉街に行き、コップ入りのお酒を買って山に入ったふたりはそれで睡眠薬を飲みながら無我夢中で山を登った。
できるだけ人に見つからないようにと、必死で雪を手でかきわけて登った。手には冷たいという感触はまったくなかった。すこしでも奥へ奥へと、そして、意識を失った。
気がつくと、岡田史子は病院のベッドで寝ていた。
凍傷になった腕には包帯が巻かれていた。
誰かがふたりを見つけて通報したのだ。心中は未 遂に終わった。