(2) 制御弁式鉛電池(VRLA Battery:Valve
Regulated Lead Acid Battery)
 
制御弁式鉛電池は近年、欧州の高級車に広く採
用されている。制御弁式とは、小型のニッケル水
素電池のような密閉タイプと比較すると弁の開放
圧が低いタイプの電池であり、充電時に正極から
発生する酸素ガスを、陰極吸収反応を利用して消
費、密閉化を図り、吸収しきれない酸素ガスは制
御弁から外部に放出するものである。陰極吸収反
応とは、充電中に正極で発生した酸素を負極の鉛
と反応させて酸化鉛から硫酸鉛とし、硫酸鉛は再
度充電して鉛に戻るサイクルを指す。しかし、液
式のように潤沢な電解液は酸素ガスの移動を阻害
するため、制御弁式鉛電池ではAGM(Absorbed
Glass Matt)セパレーターと呼ばれる微細ガラス
繊維を用いたフェルト状セパレーターを使用し、
電解液はこのセパレーターが吸収できる量に制限
して酸素ガスの移動を円滑にしている。さらに、
転倒しても液漏れしない、セパレーターで極板群
を圧迫しているため正極が劣化しにくく長寿命、
といった特長もある。一方、電解液の量が制限さ
れているため熱容量が小さく電池温度が上昇しや
すい、といった弱点がある。そのため、制御弁式
鉛電池をエンジンルームに搭載する場合は、電池
ボックスに収納するなどの遮熱対策が施される。
 一方、トヨタ「プリウス」などのハイブリッド
車も補機用電源として制御弁式鉛電池を搭載して
いるが、これは鉛電池をエンジンルーム以外の場
所に搭載する際の液漏れ防止のためである。