連載小説 ニート、プログラマを目指します!
第一話 日常

ちゅんちゅん、、

スズメが鳴いている。
寛治はのそりとベッドから起き上がると、
目覚まし時計に手を伸ばした。
10:20だった。まだ眠そうな目をこすりながら時計に目をやったまま、しばらくぼーっとしていた。寛治の目覚まし時計は目覚ましの役割をしていない。目覚まし時計としてではなく、ただの時計として使っている。寛治自身もいまのところこれといった役割を持っていない。意識的に役割を放棄しているのだ。役割を放棄しているものが持つ、役割を持たない時計という機能不全の2つの関係が面白くて寛治は少しだけ笑った。

時計から外に目をうつす、近所の主婦たちが雑談をしているのが見えた。しばらくベッドサイドから雑談する主婦たちを眺めていた。そうしているうちに時計は10:30になっていた。手に取った目覚まし時計をナイトテーブルに戻すと再び布団を被った。

目的を持たない生活、もう随分この生活を続けていた。大学を卒業後、いったんは社会に出たが、一年と持たずにドロップアウトした。以来、一般的な社会生活とはかけ離れた気ままな生活を送っている。

階下で母親が名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
寛治は、またか、と面倒くさそうに立ち上がると、一階に降りていく。母親はリビングにいた。
寛治の顔を見るなり、母親は「あんたこれからどうするつもりなの」という言葉を投げかけてくる。