●ブラック企業の「違法行為」を暴露しても「名誉毀損」にならないワケ
「むしろ、この言葉と一緒に述べられると思われる『この会社ではサービス残業が蔓延している』、『社長が日常的にパワハラを行っている』、
『消費者を騙して悪徳商法をしている』といった具体的事実のほうが、名誉毀損との関係では重要といえます」
このように指摘したうえで、岩城弁護士は、企業の違法行為を具体的に書き込んだ場合に名誉毀損となるかについて、次のように説明する。
「この点、名誉毀損行為がなされても、
(1)摘示した事実が、公共の利害に関する事実であり、
(2)摘示の目的が専ら公益を図ることにあり、
(3)それが真実であった場合には、違法性がないとされています(刑法230条の2第1項)。
そこで、労働基準法違反の働かせ方や法令違反の営業、パワハラや暴力が行われていることは、
(1)「公共の利害」に関する事実といえるので、
(2)まじめな意図で、
(3)それが真実であれば、何ら問題はないということになるでしょう」
すなわち、このような3つの条件を満たしていれば、ブラック企業の違法行為をネットで暴露しても名誉毀損とはいえない場合が多いということだ。
「世間では『ブラック企業大賞』の投票や授賞が行われたりしていますが、それが特に損害賠償請求や刑事告訴などに至っていないのは、
そこでの批判が基本的に労働基準監督署や裁判所で認定された違法な事実を前提に行われているからだと考えられます」
「ブラック企業」という言葉をネットの掲示板やブログで書いても問題はないようだが、それとあわせてどのような事実を書くかは注意したほうがよさそうだ
(弁護士ドットコム トピックス編集部)