榎本氏によれば、“できる”人ほど、悲観的であり、“できない”人ほど楽観的である傾向にある。
これは、“できる”人ほど、あらゆる可能性を想定しているためだ。いろんなケースを頭の中でシミュレーションし、
最悪の事態まで想定するから、“できる”人は不安にかられる。一方で、楽観的な思考の人はそれができない。
さらに、“できる”人は自分より上の能力の人と自分を比べる「上方比較」をし、自分もそこに到達できるように努力するが、
“できない”人は下の能力の人と比べて見下す「下方比較」をして安心しまう。このため、彼らの能力にどんどん差が生まれていく。
人は劣等感を受け入れることによって成長していくといっても過言ではないのに、能力のないものは劣等感すら持っていないのだ。

 では、能力がない自信満々な人と仕事をすることになった場合、一体どうすれば良いのだろうか。
ダニングとクルーガーは自信過剰な人の認知能力を鍛えるトレーニングをさせる実験も行っている。
認知能力が向上すると、成績下位グルーブの過大評価傾向は弱まり、
底辺グループのひとたちの著しい過大評価傾向は改善されることになった。
つまり、能力を高めるようにトレーニングさせれば、自然と自分の能力の低さに気づくことになるようだ。
自分の実力をあまりに過信することで致命的なミスを繰り返す者には、鍛練あるのみ。自分の能力を高めるほど、
自信を失っていくとは何という皮肉だろう。果たしてそれが幸せなことなのか不幸なことなのかは議論が分かれるところだが、
表面的な「意識が高い(笑)」行動をやめさせ、仕事に真剣に取り組ませるより仕方ないようだ。