金融論の権威である池尾和人の金融入門書『現代の金融入門』によると、

「銀行から見れば、貸出とは、直ちに貸出額に相当する数字を預金口座に記入することに過ぎない。したがって、この限りでは紙とインクさえあれば、銀行は、いくらでも貸出を実行できることになる(もっとも現代では、銀行の元帳は、実際には紙ではなく、電子的に管理されている)。

 これは、銀行とそれ以外の主体との決定的な相違点である。銀行以外の主体は、その発行する金融商品が決済手段としては直接に使えないために、まず資金を確保していなければ資金の提供を行うことはできない。ところが、銀行はそうではない。ただ金融商品を発行し、それを提供すれば、貸付を行えるのである。

もちろん、借り手は、
預金口座に記入された数字を楽しむために借り入れたのではないから、
その預金は直ちに支払にあてられるであろう。しかし、支払いが
預金振替のかたちをとる限りは、預金口座の間の転記が生じるに過ぎない。