知人刺殺、スナック店主に懲役10年判決 群馬
2016年12月16日

 前橋市の飲食店で男性客をナイフで刺し殺害したとして殺人罪に問われた同市広瀬町の無職、飯島隆正被告(58)の裁判員裁判の判決公判が15日、前橋地裁で開かれ、野口佳子裁判長は懲役10年(求刑懲役13年)を言い渡した。
 野口裁判長は判決理由で被告の犯行を「計画性のない突発的なもの」とし、「単独で刃物を使った殺人の中では軽い部類に属する」とした。
一方で、被害者側がみかじめ料を求めたり、営業妨害をするなどしたことにも触れたが、「人の命を奪った刑事責任はやはり重い」と述べた。

 判決によると、飯島被告は7月12日深夜、経営するスナックで知人の須藤保さん=当時(57)=の首をステーキ用のナイフで刺して殺害したとしている。

 ◇かつての親友が組員に、暴行や暴言の日々
 事件の被告と被害者は25年以上の付き合いで、須藤保さんの結婚式の司会を飯島隆正被告が務めた間柄。凶行はなぜ起きたのか−。
 発端は須藤さんが山口組系暴力団に入ったことだった。スナックを開いていた飯島被告は、豹変(ひょうへん)に驚いたはずだ。かつての親友は平成2年ごろから、みかじめ料を請求し、断ると店で暴れるようになった。
以来26年、金を要求され、暴行や暴言を受けながらも報復を恐れ警察や友人に相談できなかったという。
 「『バカ、ハゲ島』とののしられた。ペットボトルで殴られ、灰皿やマイクを投げつけられた」。法廷で飯島被告は長年、耐え続けた様子を語った。
犯行当日は酔っていた。「自分の店が傷つき、汚されるのが嫌で…。キレた」。殺意を抱き、厨房(ちゅうぼう)で自決用も含め2本のナイフを用意、犯行におよんだ。

 客らの相談に乗るスナックの店主には友人も多く、内縁の妻は常連客らの間を奔走し、減刑嘆願の署名300人分を集め提出した。

 実は、須藤さんは5年に暴力団を破門されていた。知らずに恐怖だけを膨らませていたことを逮捕後、悟った飯島被告。「話し合うこともできたかも…」「懲役の中で反省します。申し訳ない」。謝罪するしかなかった。