.「カラスの恩返し」

信じられない話ですが、"カラスの恩返し"があったんです。横浜に住んでいた三年前の春のこと。

庭に置いた鳥カゴから、オウムが逃げました。十九歳。とてもかわいがっていたのです。

遠く、山の向こうに飛んで行くのが見えたので、「あきらめよう」と自分に言いきかせました。

ところがどうでしょう。翌日の午後、空を眺めていると、山の方からオウムがこっちに向かって

飛んで来るではありませんか。しかも、両脇を真っ黒で大きなカラスが二羽、エスコートし

ているのです。二、三軒先の農家にある竹のてっぺんにオウムがとまるのを見て、カラスは

安心したように山に帰って行きました。実は、この二羽のカラスと私とは旧知の間柄でした。

六年間、飼い犬のチワワの残飯を毎日食べていたのです。どんな動物でも、かわいがっていると、

必ずそれにこたえてくれるものですね。(熱海市の主婦、吾妻やす子さん(61))