「シンはお前の動きを徹底的に研究しているからな。自分がこう動けばお前はこう動く、というのを体に叩き込んでるんだろう。
 その証拠に、キラと戦っている時とそれ以外の時で明らかに動きが違う」
「個人メタとかサイテー!」
「逆に言えば、だ。お前が今までにないような反応をした時、わずかだが対応に遅れが出る。危ない時でもギリギリ引き分けまで持ち込めているのはこのおかげだな」
「…つまり?」
「お前の癖や動作を全部変えればシンは対応しづらくなる」
「無茶でしょそれ!?」
「…だろうな。だから徹底的に練習しろ。ウッソ相手でも俺相手でもいい。相手の動きに対して柔軟に動いて隙や癖をなくして、逆に隙を突けるようになるんだ」
「う、うん…」
それ以来、若干スパルタ気味のアムロの特訓が始まった。その合間にも暇を見つけてウッソと模擬戦を行う。意外性の塊のようなウッソとの模擬戦は精神的な訓練にも最適だった。


そして、数週間後。
「くっそォ…あと一息のところで!」
シミュレーターでシンのデスティニーを撃墜したキラが勝ち誇った笑みを浮かべた。思いのほか苦戦したので頬に汗が伝っていたが、兄妹の大半には気付かれなかったようだ。
「やめてよね。弟のシンがお兄さんの僕に勝てるわけないじゃない」
兄妹数人から苦笑を受けていることを知りつつ、キラはいつものように勝ち誇った笑顔でそうのたまった。
「あんた、一体なんでそんなに強いんだよ!?」
「理由なんてあるわけないじゃない。シンが弱いんだよ」
兄であるキラが弟のシンより強いことは当然で、理由など要らない。もし理由があったとしても――それはキラと、一握りの人たちの秘密である。


これで終了です。無事に全部投下できてよかった。