わき毛女優でお馴染みの黒木友香の
テンションはすっかり下がっていた。
 ほんの二三時間前まで刑務所に
潜入して犯罪を暴いてやるという
意欲はかなり薄れかけていた。
「浣腸された時は、恥ずかしがらずに、
見たけりゃ見るがいいという気になることよ」
と竹之内優子にアドバイスされた。
 と言われても、と友香は思う。
 全裸にされても、自分の綺麗な
体を見たけりゃ見るがいいと開き直れるが、
張形やバイブや愛撫で喘がされたり、
浣腸されて排泄させられたり、
これを開き直れというのは
無理な注文である。
それに今やって
いるのは訓練である。
 責めるのも刑務所内の
猟奇的な嗜好の看守たちや
警察官に恨みを持つ受刑者ではない。
 しかし黒木友香を取り巻く目は
彼女に対する加虐の喜び
以外の何ものでもない。
 あるいは警視から女囚へと
転落する惨めなわき毛の
黒木友香の姿を面白がる目である。
 訓練に名を借りた
キャリア女性警察官への
リンチともいえなくなはない。
「私の敵を打って!
 ひととおり訓練メニューを
こなしたら、私も一緒に訓練を
受けることになっているの。
 そうでないと不自然でしょう。
仮出所の期間が終わって、
もう一度刑務所に戻らないと。
 きっと二度目は
最初の時以上に酷い目にあうと思うわ」
 竹之内優子の言葉に黒木友香
は萎えかけていた心に再び闘志を燃やした。
 どんな酷い目に合おうとも
積極的に訓練を受けようと
心に誓うのだった。
文春現代
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