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「寝ますか。寝る前にお話ひとつ、してあげますよ。ニック・ボック・ウィンクルの話って知ってます?
いい名前でしょニック・ボック・ウィンクル。彼がね、山に狩りに行ったんですよ。山へ狩りに。そこでね、小人プロレスに会ったんです。
何ていう名前の小人プロレスだったかは忘れましたけどねえ。天草海坊主だか、、プリティアトムだか・・・
ずいぶん昔の話だから。 とにかくその小人プロレスに会って、ウィンクルはお酒をごちそうになったんですよ。
そのお酒があまりにもおいしくて、どんどん酔ってしまったんです。そして、夢を見たんです。眠りに落ちて。夢を見たんです。寒いですか?寒いでしょ?
その夢はね、どんなタイトルでも許されるという、素晴らしい夢だったんです。ところがその夢がクライマックスに達した頃、惜しい事に、目が覚めてしまったんですよ。
辺りを見渡すと、小人プロレスはもういなかった。森の様子も少し変わってた。ウィンクルは慌てて妻に会う為に、村へ戻ったんです。
ところが、妻はとっくの昔に死んでたんです。村の様子も、全然変わってましてね。
わかります?つまり、ウィンクルが一眠りしている間に、何十年もの歳月が経っていたんです。おもしろいでしょ?」

「・・・あんたには、はじめっから妻なんかいなかったじゃないか」

「僕の話をしているわけではないでしょう。ニック・ボック・ウィンクルの話をしているんですよ」

「ニック・ボック・ウィンクル・・・ 小人に、何ていうタイトルをもらったんだ。できれば、俺も腰に巻いてでみたいなあ」

「覚えてます。ラム、コァントロ、それにレモンジュースを少々、シェイクするんです。わかりますか?」
「A・・・W・・・A・・・」

「そう、これで終わりってタイトルだ」     


バディ・ロジャース著 「金髪野獣死すべし」 より 抜粋