――馬場さんもブロディの扱いには困ってたんですか?

小佐野 ボクが書いたんじゃないんだけど、『週刊ゴング』に「ブロディを引き抜かれたのは馬場の落ち度ではないか」
という記事が出ちゃったんですよ。それで馬場さんが「何が落ち度だ!」と怒っちゃって。当時は後楽園ホール2階の
後楽園飯店の隣に喫茶店があったんですけど、試合前に馬場さんに呼ばれて「この記事はなんだ?」と。インタビューで
というかたちでその反論を聞いたんですけど、馬場さんいわく「ブロディの離脱は全然痛手じゃない。ブロディは客が
呼べるレスラーじゃなかった」と言うんです。

――馬場さんも言いますねぇ(笑)。

小佐野 たしかにハンセン&ブロディの超獣コンビは客が入るけど、ブロディひとりがエースのシリーズだと客入りが
芳しくなかったのは事実なんですよ。新日本に抜かれる以前のブロディはいまいち盛り上がりに欠けるレスラーではあったんですね。

――一流のレスラーだったけど、“超一流”ではなかった。

小佐野 新日本に移籍してから“インテリジェンス・モンスター”、いわゆる知的な野獣キャラが開花しましたけど。
それまではワウワウ吠えて派手なオーバーアクションをする大型レスラー。そこが日本のファンには鼻についてい
たんですね。ジャンボ鶴田のオーバーアクションが嫌われたのと同じですよ(笑)。あとハンセンのように闇雲に
暴れるわけでもなかったですし、強いけど「なんか面白くないな」という。

――ハンセンの暴走とは違って、ブロディには計算が見えてしまったんでしょうね。

小佐野 そうそう。超獣と言いながら計算が仇になった。そこがのちには強力な武器になるんですけどね。プライドの
高さは全日本の頃からありました。ハンセンが新日本から全日本に移籍するとき、最強タッグの優勝決定戦にサプライ
ズ登場したじゃないですか。あのときもブロディのプライドを傷つけないように、ハンセンは事前にブロディに話は
通してるんだもんね。ブロディは先輩。始めに言っておかないと、あとで面倒なことになってしまうから。