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あざす
では早速(*´∀`)/

敬語ヤンデレ/身分違い/異種ヤン/無理心中
男女逆転人魚姫で喪子が王女、ヤンが人魚。喪子とモブの婚約を祝う船上パーティーが終わった夜の話。
モブを殺したから声が出るようになった謎の奇跡設定。いろいろ注意。

...
頬を冷たい何かが滑る。

ふと、目を開けると浜辺で拾ってきた青年が大粒の涙を降らしていた。
「どうしたの?」

暗くて表情はよく見えないが、私が起きたことに驚いているらしい。
「…」
彼は口がきけない。

言いたいことが伝えられないからか、時折悲しそうな顔を見せる。そういった時、抱き締めてあげると彼はいくらか落ち着くのだった。

「おいで」
両手を広げて彼の方に伸ばす。
彼も無言のまま手を伸ばしてきた。

「え、ちょっと…」
彼は私の脇の下に手を通すと、軽々と私を持ち上げた。
そのまま抱き上げられ、部屋から連れ出される。

甲板まで出て、やっと彼は足を止めた。
「どうしたの?一体」
「…あ」
…彼は一言も口を聞けないはずだ。
「あな…たは…本当に…」
ところどころ掠れながらも、彼は何かを話し続ける。
なぜか動悸が止まらない。

「あいつが…貴方を助けたと…思っているの、ですか?」
その時、雲に隠れていた月が顔を出した。
美しい彼の姿が明るく照らされる。
「ひっ………」

そこにいた彼はなんと血塗れだった。
手には短剣があることもわかる。

「あの男は大嘘つきです。本当にあなたを助けたのはこの俺なのに…殺した理由はそれだけじゃありませんが」
体の震えが止まらない。彼を…殺したなんて…。
「わかりますか?あいつと、貴方を殺せば俺は泡にならずに済むんです。でも、俺は貴方を殺したくありません」
「い、嫌…」
「だから、2人で死にましょう。貴方は俺の泡に包まれて死ぬんです。ロマンチックだと思いませんか?」
「いやあ!やだあ!」
彼は私を抱きかかえたまま船の端へ端へと歩みを進める。
ようやく抵抗を始めた私だが、一向に降ろしてもらえそうもない。

「愛しています。永遠に。あなただけを」
そう言って彼は微笑むと、私を固く抱き締め、暗い海に身を投げた。