翌日、私は調教終わりの祐一さんとミーティングの予定がありました。本来であれば、私がトレセンに足を運ぶべきなのですが、祐一さんは車の運転ができない私を気遣い、お忙しいなか、私の家の近くまでわざわざ来てくださいました。

 調教が押してしまったらしく、待ち合わせの時間から少し遅れて到着された祐一さん。私の姿を見つけると、なんと全力でダッシュ! あれだけの成績を残した元トップアスリートが、私を待たせているからと全力で走って来てくださるなんて。祐一さんの優しさ、そして誰に対してでも対等で、決して偉ぶらない人柄に改めて感動しました。

 この日、祐一さんからは、「厩舎開業後は厩舎の経理をお願いするつもりだけど、どうせなら社員として働かない?」という、とてもありがたいお申し出がありました。

 結婚を機にメディアマネージャーを辞めた後は、フリーランスとしてお仕事をしてきました。夫の収入で生活をしていたので、好きなときに好きな仕事ができるフリーランスは私にとって一番都合のいい働き方だったのですが、生活のために働かなければならなくなった今は、安定した職に就きたい。つまり、どこかの会社で正社員として働きたいという気持ちがあったのですが、いっぽうで福永厩舎の仕事も絶対にしたい…。二兎を追うなかで、ちょうどいろいろと考えていたときでした。

 そんなときに、祐一さんからのこの提案。私からは何も相談していないにもかかわらず、私の状況を考えてくださったのでしょう。本当にありがたいお話で、感謝してもしきれません。