その一方で、惜しくも勝利を逃したのが、福永祐一騎手の1番人気シャザーン(友道康夫厩舎)だ。

 同馬は、エリザベス女王杯を含む重賞を4勝したクイーンズリングの初仔。こちらも昨年のセレクトセールにて、2億4200万円で金子真人オーナーが購入した高額馬である。

 福永騎手×友道厩舎×金子オーナーのタッグといえば、2018年の日本ダービーを制したワグネリアンが有名。
シャザーンも来年のダービーへ向け、ファンの期待が高まっていた。
友道調教師も「初戦から楽しみ」と期待を寄せていたが、初陣を飾ることは出来なかった。

 それでも、直線での2頭の追い比べは見応えがあるものだった。
レース後には勝った川田騎手もシャザーンを「強い馬」と評価していたように、負けたとはいえ実力は本物だろう。

 10頭立ての芝1800mのレース。
「逃げたくはなかった」と振り返った福永騎手だったが、好スタートをきったシャザーンは押し出される形で先頭に立ち最後の直線へ。
残り200m付近でダノントルネードに交わされ万事休すかと思われたが、そこから再び差し返す勝負根性を発揮。
内からジリジリと差を詰め、再び馬体を合わせたところでゴールに飛び込んだ。

 レース後には「できれば勝っておきたかった」と漏らした福永騎手だったが、内容には十分光るものがあった。
実際、ネットの掲示板でも「根性ある」「負けて強し」など賞賛の声が数多く上がっていた。

 また、この負けん気の強さは母親譲りかもしれない。

「直線で盛り返した時には、お母さんのクイーンズリングが引退レースとなった2017年の有馬記念を思い出しましたよ。
8番人気と低評価だったのですが、最後の直線では外から差してきたシュヴァルグランやスワーヴリチャードに一度は交わされたものの、再度内から差し返して2着に入りました。
勝ったキタサンブラックには及ばなかったですが、一線級の牡馬たちを相手に一歩も引かない勝負根性を見せつけたのが印象的でした。長男のシャザーンも敗れてしまったとはいえ、母親譲りの負けん気の強さが見えた気がします。今後も大きな武器となりそうですね」

「じっくり育てていけば、さらに良い勝負ができると思います」
 レース後、そう振り返った福永騎手。今回は僅かに及ばなかったが、次戦はきっちりと決めてくれるだろう。