経済は常に動いていて、その方向は慣性に大きく支配される。すなわち、経済は特定の方向に進行する経路依存性がある。この経路を変えるのはかなり難しく珍しいことだ。
これは経済活動を規定する制度が既得権や高い転換費用などのために変わりにくく、何よりも経済主導者の思考と行動が固定観念と慣行に支配されるためだ。
特に経済環境の高い不確実性と短期実績で評価される今日の企業支配構造は、経済の経路依存性を高める。
結局、経済体制の変化を伴う革命や経済危機でなければ、経済の画期的な方向転換は難しい。
韓国経済の進行経路はどうか。人口構造の急激な変化とともに産業の老齢化と躍動性低下で
成長潜在力が落ち、所得格差が拡大する衰退型経路に向かっていることを否定しがたい。
産業化の過程で見ると、1960年代以降、農業から製造業への産業構造転換を通じた生産性向上で中進国に入ったが、
1990年代以降、製造業の停滞とともに高付加価値サービス経済への進展が壁にぶつかった状況だ。
さらに世界経済の沈滞の中で各種規制立法と人気迎合的な政策で、衰退型経路への進行が加速している。良い職場とより良い福祉、安定した国防力を望むなら、経済経路の転換が求められる。
我々が新しく開くべき経済経路はどういうものか。この質問にはさまざまな意見があり、それは簡単には合意しにくい価値判断の問題を内包している。
しかしこの問題を伏せておけば新しい経済経路の摸索は難しい。まず歴史的な経験と学術研究の結果を基礎に、
こうした問題に関する客観的事実を把握しようとする努力とともに、専門家の討論と国民的な公論が形成されなければいけない。
客観的な根拠が十分でない一方的な主張が極端に対立する価値分裂状態では、新しい経済経路の確立が不可能だ。
最も難しい問題は、市場に対する政府(国家)の適切な介入の程度と経済政策の目指す点になるだろう。
市場と産業を先導しながらそのリスクと責任を分担してきた政府の保護者的役割はその効用性を喪失し、政府は市場と企業より賢いとは言いがたい。
この問題は企業の構造改革と関連し、企業経営の責任の所在と「大馬不死(大企業はつぶさない)」を容認するかどうかなど市場規律の確立問題と直結する。
成長(効率性)と福祉(公平性)