東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口 林田力さん。「アルス東陽町」のエントランスで09年8月に撮影。
林田力さんは2003年6月、東急不動産の新築マンション3階の一室を2,870万円で購入した。物件のセールスポイントは採光・通風・眺望の良さだった。
だが入居から1年も経たない翌年夏、隣地を3階建てに建て替える工事にともない採光・通風・眺望はすべて失われ価値が凋落。東急はその計画を知っていたが、影響を受ける林田さんらに説明しなかった。
騙し売りに気付き提訴した林田さんは、日本初となる消費者契約法によるマンション購入の解約と代金全額を取り戻すことに成功。
東急グループを「悪質リフォーム業者と同種」と言い切る林田さんに、1消費者として東急グループの正体を見抜くまでの経緯を聞いた。
 このため、「日中でも、深夜のように一面が真っ暗になってしまった」(訴状より)。
緑道公園も臨めなくなり、通風が悪化したことから同年の冬には結露が大発生し、「窓のサッシが水溜りなり、あふれて流れ出てくるほど」になった。
セールスポイントだった採光、通風、眺望は完全になくなり「屑物件」となった。
−−東急不動産は、そのことを知っていたのですか?
 「東急は隣地が3階建てに建て替えられることを知っていましたが、私にはいっさい説明しませんでした。
私が建て替えの件を知っていれば、窓から50センチ先が壁になることも分かるし、セールスポイントだった採光、通風、眺望が完全になくなることも分かりますから、301号室を購入することはありえませんでした」
 隣地の建て替え工事は、鉄骨が組み立てられた状態のまま、しばらく進まなかった。林田さんの説明によると、隣地所有者のAさんが「東急への抗議の意思として工事を止めていた」ためだ。
 いったい何に対する抗議なのか。Aさんは、アルス建設にあたって、東急不動産に対し、アルス建設後すぐに3階建ての作業所兼住居に建て替えることを入居者に伝えるよう、依頼していたのだ。
しかし東急不動産は、重要事項説明で林田さんと2階の入居者には建て替え計画をまったく伝えていなかった...和解調書。3千万円は戻ってくるが、失った時間や労力が戻ることはない。
右はアルス、左は建て替え中の隣地。すぐ目の前まで壁が迫ることが分かる。05年7月24日に林田さんが撮影。