中でも、腹心の警護担当が大きな役割を果たした。この人物が、クルド人が主体の武装組織「シリア民主軍」(SDF)のスパイとなって情報を収集。
自国の手柄を誇りたいトランプ政権はSDFの役割を極力小さく見せようとしているが、SDFは情報を米中央情報局(CIA)に提供し、今回の米軍の作戦に結実した。
 SDFのアブディ司令官に対する米放送局NBCのインタビューによると、このスパイはバグダディ容疑者の隠れ家に行くとき、車窓の風景から場所を特定できないように、
移動の車中で寝そべるよう命じられた(彼のような腹心以外には厳重な目隠しがされた)。しかし何回か繰り返すうちに、複数の隠れ家の位置を把握できた。
 隠れ家の中は自由に歩き回ることができ、スパイはバグダディ容疑者が脱ぎ捨てた下着と血液を持ち帰ることに成功。SDFがDNAを調べ、
本人だと確認した。「それをCIAに伝えたら、米政府はがぜん本腰を入れ出した」という。この腹心が寝返ったのは、「親族がISにひどい仕打ちを受けたことへの復讐心からだった」。
 一方、英紙ガーディアンによると、バグダディ容疑者の複数いる妻の一人と姪も、居場所の特定につながる情報をイラク当局とSDFに伝えていたとされる。
 先述のスパイは、今回の米軍の作戦の際にも隠れ家にいて、米軍と共に脱出したという。米紙ワシントンポストは、彼が懸賞金の全額または一部を受け取る見通しだと報じている。

「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年11月14日号
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