乙武さんの「銀座の屈辱」で議論沸騰 「車いす」を理由に入店拒否できるか?
弁護士ドットコム 5月20日(月)18時50分配信

『五体不満足』などの著作で知られる作家の乙武洋匡さんが、東京・銀座の飲食店に予約して出向いたところ、
車いすでの入店を断られたことをツイッターで明かし、議論を呼んでいる。

たしかに、公共空間の一つである飲食店には、障害者を含めたすべての人が過ごしやすい環境が求められている
といえるだろう。だが、すぐには対応できない事情がある店舗もあるはずだ。では、今回のケースのように、車
いすでの入店を断ることは、なんらかの権利侵害にあたるのだろうか。また、「車いすの客はお断り」などの掲
示をしておけば、入店を拒否できるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

●障害者基本法は「障害を理由とした差別」を禁じている

「憲法14条は、法の下の平等をうたっており、障害者基本法4条は、『何人も、障害者に対して、障害を理由と
して、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない』と規定しています」秋山弁護士はまず、
憲法と障害者基本法に言及して、障害者に対する差別が禁じられていることを示す。

では、障害者を不当に扱うと、ただちに違法になってしまうのだろうか。

「憲法14条は、今回のような民間の問題に直接適用されるものではなく、障害者基本法4条も、多分に理念的
な規定ではあります。ただ、これらの規定の趣旨に照らし、民間の問題であっても、障害を有することを理由
とした不合理な差別を行えば、人格権を侵害する不法行為(民法709条)として、損害賠償義務を生じさせる
ことがあり得ます」

「障害を有することを理由とした不合理な差別」とは、具体的にどんな場合が考えられるだろうか。

「たとえば、店内のスペースの広さなどから、物理的には車いすの客でも十分に利用可能であるにもかかわら
ず、『車いすの客はお断り』といった掲示を出して、車いすであることを理由に一律に入店を拒否するような
ケースが考えられます。そのような場合には不法行為として、損害賠償を請求される可能性があるといえるで
しょう」