週刊新潮2017年5月18日号ワイド特集 男と女の「劇場」(掲載頁46-47)より

9『「老舗文壇バー」ママが明かす 「三島由紀夫」「手塚治虫」秘話』

敷居の高い印象のある夜 の銀座でも、かつて十数軒 あった「文壇バー」は、今 や幾つかを残すのみ。中で
も川端康成や井上靖といっ た文豪らが愛した老舗が 「クラブ数寄屋橋」だ。こ の度、開店から半世紀とい
う節目を迎え、「銀座の夜の 神話たち」を上梓した園田 静香ママが、知られざる作 家の秘話を明かしてくれた。

「三島由紀夫のエピソードは省略。]

「宇宙人とお茶してた」
 足繁く通ってくださった お一人に、漫画家の手塚治 虫先生がいます。多い時は 週に2回ぐらい。あまり夜
遊びをされる方ではないの ですが、クラブで飲まれる 場合、9割方は「数寄屋橋」 を選んでいただきました。
 私は昔から母に”人前で 歌うのは止しなさい”と言 われるほど音痴なので、自 分で作詞作曲をしていまし
た。だって、自分の作った 歌なら音程が間違っていて も誰にも分らないでしょ。 そうやって作った曲を先生
に披露すると大げさに褒め てくださり、私の曲でLPを 制作した際はプロデューサ ーを務めてくださいました。
 打ち合わせの際、先生が 遅刻されたことがありまし
て。「先生、何してたの!」 って聞いたら、「ごめん、実 は宇宙船に乗って宇宙人と お茶してたんだよ」なんて
仰る。じゃあ、私も宇宙へ 連れてってと返すと、笑い
ながら、今度は一緒にと約 束してくれました。決して 男女の仲というものではあ りませんでしたが、先生は
創作活動を通して私を可愛 がってくださって。素晴ら しい関係だったと感謝して います。先生のボトルは今
も店に置いてある。どうし ても捨てられないのですよ。

 [以下話が別のことになる。]
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