萩尾 いろいろなんですが、非常に理不尽な怖い目にあっているとか,何かのことで、ずっと
叱られているとか。たぶん怒っているのは親だと思うんですけどね,自分は説明したいのに、
全然しゃべれないとか。
追い詰められるシーンも何度も夢に見ていたんですが、『残酷な神が支配する』を描いてい
る途中から、まったく見なくなりました。リハビリになったんじやないかな(笑)。それまで
は怖い夢を見るのは当たり前だと思っていたんですが、「あ、見なくなるんだ」とわかった。
自分の中のドロド口を全部出しちやったら、悪夢を見なくなったのが面白かったです。
-----夢そのものは見るけれど。
萩尾 はい、追いかけられ責められる怖い夢を見なくなりました。
 この連載が続くあいだに、父親の心理についても踏みこんで描けるようになりました。その
おかげで、「大人対子供」の関係を描く時に、以前よりも大人の心理について考えられるよう
になったんです。

『残酷な神が支配する』が終わったあと、『パルバラ冥界』を描いたときに、
初めて父親の立場の人を主人公にしました。『バルバラ冥界』は父親と息子の話で
す。それまでは子供の立場からでないと、父親は描けなかったんですよ。
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