短気で能天気。しかしそこが魅力的な『超高校級の体操部』こと終里赤音。
「うええ……えーん」
……ジャバウォック島にある病院の一室で、ベッドに寝っ転がって泣き喚く今の彼女には、
それを見る影もない。
絶望病という悪魔に、彼女の精神はまるで苛められっこの子供のようになってしまった。


「赤音ちゃん…大丈夫、大丈夫だからね」
それを母親か姉のようにあやしているのは小泉真昼。
彼女の才能は『超高校級の写真家』であって、決して保母でも小児科医でもない。
しかし、立派な母親と物ぐさな父親という環境で育まれた世話好きという性格は
今の状況では有利に働くものだった。

何より、今の彼女には罪悪感から来る責任感が備わっている。
「ふええ……弐大……私さみしぃよぉ……」 「……」
終里が仲が良かった、今は亡き『超高校級のマネージャー』の名を呟く度、それは刺激される。
品性の無い男だったが、そんな弐大が命を張って金属バットから守ってくれたおかげで
今の自分はいる。

さらに言えば、自分に懐いてくれた西園寺も同様だ。
あの憎むべきモノクマが仲間を侮辱したとはいえ、それで短気を起こしたが故に西園寺は
重傷を負い、苦しんでいる。

死の運命を回避してくれた彼らの分まで… そんな想いが、絶望病感染の恐怖をさっぱり
打ち消していた。
だから終里の身体に触れるのも厭わず、寝汗を拭っていた。