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MOTHER3のダスターはヘボカッコイイ2ホチ目
0001名無しさん@お腹いっぱい。垢版2006/06/04(日) 00:35:29ID:IENzRgOy
ダスター・・・。
わしらは もっと
べつのじだいに うまれてきたら
よかったかも しれんな。
おさないおまえに
ムリに くんれんさせて
ひだりあしを ふじゆうに
させてしまったような きがするのも
むらびとたちに とけこめないような
せいかくに させてしまったのも
すべて わしのせいだ・・・
と おもうんだよね。
0592おまえのばしょ 1/4垢版2007/01/12(金) 01:46:22ID:wCpQxlIK

エレベーターで声を掛けられた時は、正直びっくりした。
そのまま引きずられるようにライブハウスまで連れて行かれたけれど、
俺はまだ決めかねていた。
寄り道をしている場合じゃないだろうと思う自分と、
あの陽気な連中にもう一回会いたいと思う自分とがぶつかって、
本当の事を言うと、どうしたら良いのか分からなかったんだ。

クラブ・チチブーを離れたあの夜。
俺は、アフロと一緒にタメキチを置いてきたと思っていた。
ダスターに戻る事を選べば、ベーシストのタメキチはあの場で消えて無くなる。
そういう風に。
けど、そうじゃあなかったんだ。
リュカ達を守ると誓ったダスターも、音楽に心底惚れちまったタメキチも、
どっちも『俺自身』だったんだ。
それを気付かせてくれたのはリュカ達だった。
迷いに迷った俺に向かって、今まであまり笑顔を見せなかったリュカが、
「行っておいでよ、ダスター」
と、懐かしそうな笑顔を見せてくれた。
ボニーがそれに賛成するような吠え声を上げ、クマトラに至っては、
ヨシコシ時代を思い出して「うっふん」なんて言い出す始末だ。
そんな二人と一匹を見て、俺はつくづく実感したんだ。
俺は、どうも変なところで小難しく考えすぎるから駄目なんだな。
名前なんてどうだっていいじゃないか。
だから、俺は再びアフロをかぶる事にしたんだ。
0593おまえのばしょ 2/4垢版2007/01/12(金) 01:53:31ID:wCpQxlIK
「準備は良いか? タメキチ」
楽屋で本当にピカピカに磨かれたベースのチューニングを再確認していると、OJが俺の肩を叩く。
「ああ。バッチリだ。何曲だって弾いてやる」
ブランクを取り戻せるだろうかという不安は、楽器に触れている間に
吹っ飛んだ。どうやら俺は、すっかり音楽に酔っぱらってしまったらしい。
こいつらとセッションができる事が、自分で思っていたよりずっと嬉しいんだから。
「セットリストの変更、スタッフに言ってきた。かなり無茶を言ったから
泡食ってたけど、タメキチが帰ってきたんだって言ったら、張り切ってたよ」
楽屋にシミーが駆け込んでくる。いつもは物静かなシミーも、ライブ前は
テンションがあがる。後ろでは、開演前だって言うのに、バッチーと
マジックが差し入れを巡ってジャンケスをやっている。懐かしい『いつも』の風景だ。
ベースを立てかけて、俺は水やスコアの置かれたテーブルの上をざっと見渡した。
弦を弾く右手の指に巻くバンデージが見つからない。
「なあ、誰か……」
「これだべ? タメキチ」
振り向いた俺に、マジックが投げて寄越したのは、俺の探し物だった。
俺が何を探していたのか分かっていたらしい。
時間は関係ない、そこにあるのは時間を軽く飛び越えた何かだ。
「よし、行くか」
OJの一言で、俺たちは輪を作った。右手の拳を前に出す。
こうやって丸くなって、OJの一言で互いの拳を軽くぶつけあうのが、
ステージにあがる前の習慣だった。
「そうだ――いきなりだけどな」
意味深なタメを作って、OJがにやりと笑う。
「一応セットリストには入ってるんだが、キングPの曲はやらないぞ。
そのかわりに、俺たちと、待ちくたびれてるあいつらが、
とびきりハッピーになれる曲をやろう。
俺たちの音楽は、俺たちのもんだ。そうだろう?」
その一言で俺たちも、OJと同じ顔つきになった。
そうだな。俺たちの音楽は誰の自由にもできない。俺たちにもだ。
強いて言うなら、天にいる、音楽好きなどっかの誰かさんぐらいだろうな。
0594おまえのばしょ 3/4垢版2007/01/12(金) 01:58:34ID:wCpQxlIK
歓声の渦の中ステージに飛び出すと、俺のちょうど真ん前に、
リュカと、クマトラと、ボニーがいた。
今日のボニーは、あの時みたいなイヌ的なお兄さんではなくて、
ただのイヌだ。
俺から頼み込んだんだけど、良くOKもらえたもんだ、ボニー。
こら、アフロを指さして笑うなよ、クマトラ。
まあ、リュカも楽しそうだから、良いさ。あいつはもっと笑った方が良い。
普段の俺が、あいつらにどう見えているかは知らないし、気にした事も
ないんだが、「格好良かっただろう?」と胸を張れるステージにしたい。
楽しんでくれよ、そう言うように二人と一匹に笑って見せた。
「――ノンストップで行くぜ!」
OJの声を合図に、バッチーがスティックを鳴らす。
こうなれば、あとは生まれてくる音に体ごと預ければいい。
一発目は、俺が即興で弾いたベースラインが元でできた『D.C.M.Cのテーマ』。
安定感のあるバッチーのドラム、OJのソウルフルなサキソフォンと競うように
暴れるマジックのギターソロに、シミーの鍵盤が花を添える。
この大きな音楽のうねりに乗っかっていると、心底幸福で、本当に恐い物は
ないように思えるから、不思議だ。
……でも、だって、そうだろう?
俺は左手でベースをくるりと回し、自分に向かって内心で呟く。
ここには、リュカたちが居て、愛すべきろくでなし共も居る。
おまけに、そこには俺たちD.C.M.Cの、クールでグルーヴィでちょっぴり
エッティでうっふんな音楽まであると来た。
これだけ幸せな事が、これだけ満たされる場所が、他にあるか?
ここがきっと、タツマイリでは見つけられなかった、
『俺だけの場所』なんだろうな。
0595おまえのばしょ 4/4垢版2007/01/12(金) 02:07:18ID:wCpQxlIK
最後のフレーズが狭い箱に反響して、同時に俺たちの演奏より大きく感じる
ほどの声や拍手で、お客が応えてくれる。
今日はどいつもこいつも、いつも以上に熱くなっているみたいだ。
目線を少しだけ落とすと、リュカ達も最前列の柵から身を乗り出している。
楽しんでくれているようだ。
俺は客席にいる連中の顔を眺め、ステージのメンバーを見た。
そうして、腹の底から突き上げるように湧き上がったのは、
もう一度こいつらとセッションがしたいという、思いだった。
今この場にいる奴らみんなで、もう一度心ゆくまで音楽に酔っぱらって、
フラフラになるまで楽しみたい。
どうしようもない笑顔や、ろくでもない時間を、こいつらと分け合いたい。
リュカ達を守る為だけじゃなく、その場所を取り返す為に、俺は行こう。

客電が急に落ちたのは、その時だった。

−了−

以上です。
今年も、ここがヘボカッコイイダスターの話で賑わいますように。
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