>>1からの続き

■「どこも買えないんだろ?」契約金問題の本当の事情

 今回の件に関しては、”飼い犬に手を噛まれた”ナベツネさんを見てるのも面白いし、ナベツネさんも自分の発言が
メディアに取り上げられて騒ぎになっているのを楽しんでいるところもあるでしょう(笑)。あの人はエンターテイナーだから。

 とはいえ、ナベツネさんも86歳。さすがにもう長くないし、巨人はナベツネさんが死んでからが問題だよ。あの人が
いなくなっちゃうと、各球団が好き勝手言い始めると思う。だから、それまでにMLBのようなコミッショナーを頂点とした
球界システムを整えておく必要がある。その場合もやはり、巨人が先頭に立って旗を振らないといけないと思うよ。

 巨人は金満球団で、なんでも金にモノを言わせているという印象が強いけど、もともと10億円とも言われた
阿部(慎之助)や高橋(由伸)の契約金や裏金疑惑に関しても、巨人だけを責められる話じゃない。そもそも、
他球団が有望選手を巨人に取られないように裏金を渡し始めたんだから。

 FA(フリー・エージェント)制度で強引な補強をしていると言われている件も、他球団が年棒の高いFA選手を
雇えないから巨人が手を挙げているだけ。「どうせどこも買えないんだろ?ウチは金あるから買うけど」みたいな(笑)。
まだまだ、懐にも体力的にも巨人には余裕がある。やはり、巨人が率先して改革しないとプロ野球は変わらないですよ。

ソフトバンクの孫(正義)さんや、楽天の三木谷(浩史)さんのような、新時代の経営者とか呼ばれてる人たちが
参入してきて、大きく変えてくれるかなと思いきや、結局彼らだって、旧態依然としたシステムの中でしか
やれていないでしょう? それがいい証拠です。

 僕の年代だと、心の隅に”巨人願望”ってあるのよ。四国の田舎(高知)出身だから巨人しか知らなかったし、
長嶋(茂雄)さんに憧れたりもした。僕が現役だった時代だって、毎日テレビ放送があって、後楽園球場に
観客が5万人も入っていて、巨人はとても人気があった。世の中全体に「巨人に勝たせなきゃいけない!」っていう
空気すらできてたからね。巨人と対戦してると、7回くらいから急にストライクゾーンが厳しくなったりして(笑)。
審判が意識的にやっていたのかどうかはわからないけど、それだけ、巨人中心に野球界が回ってたんだよ。

 でも、僕は阪神タイガースに入って、巨人が”親の敵”みたいになっちゃった。だから、巨人愛は持っていないけど、
球界を変革してくれることには、これからも期待してますよ。


●江本孟紀(えもと・たけのり)

1947年、高知県生まれ。現役時代は南海ホークスや阪神タイガースで投手として活躍し、引退後は、野球解説者、
政治家として活躍。エモやんの愛称で親しまれ、南海時代から、その歯に衣着せぬ物言いで人気を集めた。
近著に『野村克也解体新書』(無双舎)、 『「アホ」がプロ野球を滅ぼす』(KKロングセラーズ)ほか。

以上