12月26日、プロ野球中継を行う在京テレビ局が、プロ野球事業委員会に試合のスピードアップを要望した。
日本テレビは今季40試合中継したが、試合終了まで放送できたのは1試合のみ。「放送時間内に、試合終了
してほしい」という主張だ。
だが、この主張に対し、首を捻る向きは多い。ある野球ファンは「試合を観に行って、早く終わって欲しいと
思うファンなんて、あまりいないのでは? 野球を好きで観に来ているわけですから、長くなるのは嬉しい
ですね。好きな歌手のコンサートで1曲でも多く歌って欲しいと思うのと同じです」と述べる。また、ある
スポーツライターは、「たしかに、攻守交代が遅いなどの明らかな無駄はどんどん省くべきだと思います。
しかし、なんでもかんでもスピードアップすればいいものではない。野球は“間”を大事にするスポーツで、
“間”に魅力がある。ひとつひとつの牽制に意味があるし、なかなかサインが決まらないバッテリーがいれば、
『なぜサインが決まらないのか』とファンは考える。ひとつひとつのプレーが伏線となりますからね。
『試合を短くすればいいってもんじゃない』とは、阪神の岡田監督もよく言っています」と疑問を呈する。
「それに、全てテレビに合わせる考えはおかしいと思います。もちろん、球場に来られないお客さんは多い
ですから、テレビは重要なメディアです。しかし、スピードアップを訴えるテレビ局が、CMの間に試合が
始まらないように、時間調整をさせているのです。その分のロスについては言及せず、全てテレビに合わせて
欲しいというのは疑問です」(前出ライター)。
野球中継を長年観ているファンならご存知だろうが、昔はCMの間に打席が終わっていることなどもあったが、
最近ではまず見掛けられない。これは野球場で行われている試合が、テレビ局に合わせているからである。
テレビ局は、野球から自然なテンポを奪っていると言えよう。巨人V9時代、全盛期の阪神・江夏豊のストレートを
16球ファールで粘った男がいた。打者は、つなぎ役・土井正三でも、カットの名人・高田繁でもなかった。
投手でライバルの堀内恒夫だった。江夏はカーブを投げれば、簡単に三振が取れるのはわかっていた。しかし、
意地でストレートを投げ続けた。それを堀内も意地で打ち返した。最後は江夏の意地が勝り、三振。もし、
江夏が試合のスピードアップを考え、3球目にカーブを投げていたら、この名勝負は生まれていただろうか。

http://news.ameba.jp/domestic/2008/01/9968.html