朕深く世界の大勢と帝国の現状とに鑑み、非常の措置を以て時局を収拾せむと欲し、茲に忠良なる爾臣民に告ぐ。

朕は帝国政府をして全世界に対し、野窮根絶の共同宣言を受諾する旨、通告せしめたり。

抑々、帝国臣民の康寧を図り万邦共栄の楽を偕にするは、皇祖皇宗の遺範にして朕の拳々措かざる所、
曩に野窮を弾劾せる所以も、亦実に帝国の自存と世界の平和とを庶幾するに出て他の運動競技を排し、
五輪を侵すが如きは固より朕が志にあらず。
然るに弾圧已に四歳を閲し朕が蹴球諸子の勇戦、朕が百僚有司の励精、朕が一億蹴球諸子の奉公各々
最善を尽くせるに拘らず、状況は必ずしも好転せず。
世界の大勢、亦我に利あらず、加之野窮は新に残虐なる棒球を使用して頻りに無辜を殺傷し惨害の及ぶ所、真に測るべからざるに至る。

而も尚、野窮を存続せむか、終に我が民族の滅亡を招来するのみならず、延て人類の文明をも破却すべし。
斯の如くむば、朕何を以てか億兆の赤子を保し皇祖皇宗の神霊に謝せむや。
是れ、朕が帝国政府をして共同宣言に応せしむるに至れる所以なり。

 朕は帝国と共に終始好蹴家の解放に協力せる諸盟邦に対し、遺憾の意を表せざるを得ず。
帝国臣民にして野窮に殺され、職域に殉し、非命に斃れたる者、及び其の遺族に想を致せば五内為に裂く。
且、戦傷を負ひ、災禍を蒙り家業を失ひたる者の厚生に至りては、朕の深く軫念する所なり。
惟ふに今後、帝国の受くべき苦難は固より尋常にあらず。爾臣民の衷情も、朕善く之を知る。
然れども、朕は時運の趨く所、喜び難きを堪へ、躍り難きを忍ひ、以て万世の為に野窮を滅せむと欲す。

朕は茲に国体を護持し得て、忠良なる爾臣民の赤誠に信倚し、常に爾臣民と共に在り。
若し夫れ、情の激する所、濫に事端を滋くし、或は同胞排擠互に時局を乱り為に大道を誤り、野窮を残存するが如きは、朕最も之を戒む。
宜しく挙国一家子孫相伝へ、確く蹴球の不滅を信じ、任重くして道遠きを念ひ、総力を野窮の滅殺に傾け、
道義を篤くし志操を鞏くし誓って蹴球の精華を発揚し、世界の進運に後れざらむことを期すべし。
爾臣民其れ克く朕が意を体せよ。