美学者の伊藤亜紗・東工大教授「コロナ禍で学生は理系だけでは解けない問題を知った」
https://www.asahi.com/edua/article/14451869

理系の学生は、自分を語ってはいけないということを訓練されています。
実験などは誰がやっても同じ結果が出る再現性が大事だからです。
他方で、科学やテクノロジーを突き詰めると、「生命」や「幸福」などの捉え方には文化や宗教の影響があり、
理系の学問も普遍的ではないことに気づきます。
最終的には人間を理解する力が重要になります。

新型コロナウイルスが広がったこの1年半、学生や大学院生たちは自分のせいではないことに理不尽に巻き込まれる不幸を体験し、理系の世界だけでは解けないことを知りました。

立志プロジェクトでは毎年、水俣病のことを学びます。
当時、東工大の教授が「有機水銀が原因ではない」という論文を書き、原因究明を遅らせる結果になりました。
この授業への学生の反応が、昨年、今年は随分違います。自分のせいではないことで人生が狂ってしまうことを体験したからでしょう。
理系の学生はシステム的な思考が強く、物事はうまくコントロールすれば計画通りにできると考えがちです。
しかし、コロナのように危機的な状況では、人文社会的な思考の必要性を感じます。