これは鬼和尚と称する統失を患った中年男性の妄想物語である。
(勿論、彼は和尚でもなければ悟りなどひらいてない。)

昭和のある年のある地方都市で、某新興宗教を狂信する一家の長男として生まれるが、御多分に漏れず幼少期から恵まれない環境の中で宗教の理想とする所とは相矛盾する環境でその歪んだ人格の形成がされた様である。

当然性格は荒れ、小・中学で問題を起こし尽くし、押し込められる様に入学させられた工業高校も半年もしない内に退学、その後職に就くものの長く続くこともなく、また、職場では様々なトラブルを起こしていたらしい。
時には犯罪に手を染め、又、薬物に手を出しては人の道から外れていった様であるが、いかんせん、小心者の故、数日の勾留を繰り返す程度であったらしい。
そんな折、仕事をする事が面倒となった彼は、生活保護を受ける事を思い付き、福祉課の職員を半ば恫喝しながらから生活保護の認可を得る。

その後、職を探す事もなく、ふらふらと近所の深夜スーパーを徘徊しては限られた生活保護費に不満を覚え、突然閃いた如く宗教に活路を見出したのであった。