それからしばらくして警察官は再びやってきた。
絵を譲った老人はすでに亡くなっていて、残った家人もその絵がどうなったかわからないとの話だ。
私に何か心辺りはないかとの事だった。
そんなのあるわけがない

どうも国際的な絵画の密売グループが絡んだ話らしい
私が模写した絵は、ヨーロッパのある国で本物として取引されたらしい
何億もの金が動く絵画オークションの世界だ。
あの程度の模写がわからないのかと思ったが
私の模写は予想以上に高い評価を得ていたらしい
それに真作は何年か前に盗難被害にあって現在は行方知れずになっている。
そのこともあり、私の絵は真作として、とある市場に売り渡される事になったそうだ
そして購入先は真作の所有者の美術館だったオチもある。

盗難文化財の取引は現在は国際的に厳しく取り締まりを行われ
盗難品と知られる絵を購入しても、なかなか金にはならない
だから窃盗団は所有者に対して売却することもしばしばある
もちろんその絵の市場価格より遥かに安い価格ではあるが
盗難品を取り返せるのならと、購入する美術館もいる。

美術館の鑑定家は、私の模写した絵を真作だと断定し、購入を決めたそうだが
私にしてみればありがた迷惑な話だ。
模写した絵は、より真作に近づけるように色々と手を加えられていたようだ
サインを偽造しただけではなく、古く見せるような処置も色々とやっているようだ
写真ごしでは描いた私自身でも自分が模写したものだとわからないくらいだからな
それを差し引いてもベテランの鑑定家が真作だと判断するほど私の模写は完成度が高かったそうだ。

取り返した後に改めて向こう側の手にあった間は出来なかった
レントゲン撮影などして初めて贋作と気づいたらしい
警察も私が窃盗団や贋作の売買グループと繋がりがあると疑っていたようだ
贋作として売るつもりならサインなんかするか。
こんなわけで、この事件以降、しばらく周りが五月蠅かったよ