何年か前、職場の仲間と飲みに行った時の話。
日本酒を注文したのだが、お銚子だけが来てお猪口が来なかった。
まあ、店員さんも「ついうっかり」ということもあるだろうと、お銚子を持ってきた、まだ学生さんっぽい若い店員さんに「すみません、お猪口もお願いします」と頼んだのだが、
その店員さんは妙な顔をして首をかしげながら「はあ」と言って、奥へ戻っていった。

少ししてその店員さんが「どうぞ」と持ってきたのは四角くて小さくて底の浅い、どう見てもお醤油皿(おてしょう、っていうのか?)。それを五枚重ねに持ってきてテーブルに置いて
そそくさと去って行った。

一同「???」とそれを見つめ、まさかこれがこの店のお猪口なのかと一杯注いで飲んでみたが、絶対に違う。
たまたま近くを通りかかったベテランっぽい店員さんに「すみません、お猪口をお願いしたらこれが来たんですけど」と言うと、ベテランさんは「あ、申し訳ありません!」と
こちらが恐縮するぐらい深く頭を下げて、ちゃんとお猪口を持ってきてくれた。

俺の発音が悪くて「お猪口」が「おてしょう」に聞こえたのかもと思ったが、みんな「いや、ちゃんとお猪口って言ったよ」と言う。

いくら若いとは言え、居酒屋で働いてる人がお猪口を知らないってことがあるもんかね。
このときの出来事は笑い話としてたまに話に上ったりする。