それでも私たちは先生の悪口は沢山言ったが、Aの悪口を言うことはなかった
ある日休み時間にドッジボールをしようという話になった
するとAが「えー、ドッジボール…?」と言った
「やりたい子だけやればいいんだよ」
事実、クラス全員参加などではなく教室で過ごす子や既に他の遊びを始めてる子もいた
だけどAは続けて言った
「日焼けや怪我したらどうするの?」
「?怪我は保健室へ行くよ?」
「傷ができてもいいわけ?」
常に苦笑するような話し方だった
そこで私はいらいらして言ってしまった
「私たちは怪我しても気にしないもん。気になるなら他のことすれば?」
その日結局Aは日陰からずっとドッジボールを眺めていた
大人になってから、彼女が幼少期について話している媒体を偶然見た
「いじめという程ではないけれど、よく仲間はずれにはされていました。ドッジボールに混ざろうとしたら『Aちゃんは女優さんなんだからどうせ怪我なんてしたら大騒ぎしちゃうでしょ?』なんて嫌味を言われたりして」
これがあの時のことかはわからない
だけど、あの日ちょっとAのことが嫌いになって、今まで気にならなかったことがどんどん気になるようになって、
学校へ行ってAが出席してるとなんだかどす黒い気持ちがもやもやして、
それをどうしたらいいかわからなくて自己嫌悪もあって家で幼な返りをしてしまったり夜突然泣いてしまったりした気持ちがばーっと思い出された
そしてなぜかわんわん泣いてしまった
もしかしたら私が記憶を捻じ曲げていて、本当はAのことをいじめていたのかもしれないとも考えた
でももうわからない
今日みたいに何かがきっかけで思い出す度胸がぎゅっとする