「何だというんだ、これはいったい?」
「それを見せたかったんですよ、イョマットが他のものと一緒に出たって言うもので」
それはノートほどの大きさのプレートで壁にかけるためのような穴があいていた。
「表に何かわけのわからない文字みたいなものが書いてあるんですよ。でも、そんな字は見たことがありません」
「へっ、ロシア語か何かだろう。貴重な時間をこんな・・・こんなガラクタで無駄にするとはもってのほかだ」
教授は腕を大きく後ろに引くなり、川に向かって高々と投げた。それは一瞬夕陽にきらりと光って川岸の軟泥に落ちた。

斜面の下の川岸では、ぬかるみに落ちたプレートが数秒置きに寄せて来る漣に前後に揺られ、そのたびに落下したときの微妙なバランスは失われて行った。
やがて、それを支えていた砂の畝が流れに洗われて、プレートは窪みに嵌り、濁った急流のそこにめり込んだ。
翌朝窪みはなくなっていた。僅かに、小刻みに波立つ流れの底に、プレートの一端が突き出ているばかりだった。
プレートに書かれた文字は翻訳すれば、「>>1乙」と読めたはずである。