武勇伝とはちと違うと思うけど、まあ、武勇伝を含めた笑い話とでも思ってください。

俺は教員とかではないが、前職で学校と関わる仕事をしてた。地元で就職してたんで、かつてお世話になった先生や教師になった同級生ともばったり会うことがあり、
昔話に興じることがよくあった。特に、当時新任だった若い先生が学年主任になってたり、担任が教頭になってたりで「もうクラスが持てないからつまらないよ」なんて話したり。

そんなある日、とある小学校の職員室を訪れたら、俺と同じ年頃の女の先生が男の子と何やら話していた。その先生と俺はふと視線が合い、先生の顔に見覚えがあった俺は
「あ、Aさんじゃない!」と思わず声をかけた。

Aさんは俺の顔を覚えていなかったようなので、「ほら、中学の頃吹奏楽部でよくいじめられた〇〇(俺)だよ!」と深く考えもせずに言うと、彼女は「あっ」と小さく叫んで
「どうも」と顔を伏せてしまった。

なんか変な反応をされ、そのまま彼女とは会話もなく仕事を終えてその場は帰ったのだが、後日別の先生から聞いたところによると、なんでも彼女はいじめをしていた男の子を呼び出して
叱っていたそうだ。そりゃ、ばつが悪いよなと思うと同時に、せっかく教師の義務感からいじめを叱っていた彼女の面目を丸つぶれにしてしまったことは申し訳なく思った。

当時俺のいた吹奏楽部は六十人の部員のうち男子部員はたったの六人。当然、女社会。こと俺の学年はいじめる相手を見つけてまとまってるところがあった。
そんなんだから当然レベルは低かった。

そんな中、些細なことでいじめのターゲットにされた俺。まあ、女特有の陰湿ないじめを散々されたよ。そんなグループの中心になっていたのがAだった。
おかげで女性不信になって高校の頃に初めて訪れたモテ期を棒に振ったりしたけど、当時はもう笑い話にできるくらいには立ち直ってた。
そんなんだから、昔のことは水にして旧交を温めようとしたのだけれど、意図せずして仕返しすることになってしまった。

その後は転職してしまったこともあり、顛末がどうなったかも知らないし、彼女とは一度も会っていない。今でも元気に良い先生をやってくれていることを願う。