スーツケースを引いて旅行に出かけた時の事。
地上から地下鉄改札に下りられるエレベーターがあったのでそれに乗ることにした。エレベーターはむき出しじゃなくて透明のガラスで四方を囲まれちょっとした小部屋みたいになってるタイプ。
小部屋空間には待っている人がいなかったので、スマホで時刻を確認しながらエレベーターに乗り込み「閉」ボタンを押した。
すると後ろからバタバタと足音が聞こえたので、「あっ、乗りたい人がいるんだな」と思って閉まりかけの扉をもう一度「開」ボタンで開けた。
そしたらちょうどアラフォーカップルと思しき二人連れが乗ってきた。乗り込むなり女の人が一言私の顔を見て
「性格悪いわー」と吐き捨てていった。
一瞬頭が真っ白になったものの、すぐに追いかけて、「あの、今の私に言ったんじゃないですよね?」と聞いた。
その人はしばらく黙った後、「だって、自分だけ乗ってさっさと閉めたでしょ。私たちの方全然見てなかったじゃない」
……いやいや、一応乗り込むときに周りに人がいないかの確認はしたつもりだけど。
お二人の足音を聞いて開ボタン押したんですけどと言っても、
「私が走って外から開ボタンを押したから開けたんです。そもそも開けてあげたって気持ちがあれば」、普通はこちらを見てにこっとしたり
ああ乗れてよかったですねーって態度で示すものでしょ」
と言われた。私が再度、とにかく締め出す気はなくて、エレベーターは開けたんですと繰り返したところに電車が来た。
その女の人、最後はこちらを見ることなく、「とてもそんな風には見えなかったわ」と言い捨てて電車に乗り込んでいった。
その間、男は黙って突っ立っていた。女をいさめるでもなく、一緒になって私を責め立てるでもなく。
正直、いい年してくるぶしまでのフリルスカート、ロングヘアにつば広帽子という少女趣味で非常識なことをまくしたてる女より
いい年してこんな思考回路の残念な女を連れて歩いてる男の方がスレタイだった。