近頃、痴漢冤罪というものが問題になっているが、自分が捕まえたのはガチの痴漢だった。とは言っても、俺は目撃はしていない。

ところは都内某所、時は十年ちょい前のある日曜の夜。俺は友達の家で遊んだ後、寝る前に軽く晩酌でもと、最寄り駅のコンビニでビールとつまみを買って家路を辿っていた。
すると背後から「待てー!」という大声。何事かと振り返ると、メガネで小太りの男が目の前を走ってゆく。その後を別の男が「待てー!」と叫びながら追いかけてゆく。

これは犯罪がらみかと思った俺も追跡に加わり、ほどなくしてメガネの男を捕まえた。
しかし、俺はそいつが何をしたのか知らないので、「で、こいつ、何やったんですか」と追っていた男に訊いたが、興奮状態なのか答えない。
二人してメガネを引きずってゆくと、とあるマンションの前に到着。マンションの前では若い女性が泣きながら待っていた。
そこでようやく事情が判明。なんでもその女性が自宅マンションに入ろうとキーを解除していたところ、メガネがお尻を触ったという。その悲鳴を聞いてマンションを駆け出して
きたメガネを男の人が追いかけ、途中で俺も加わったという次第。

女性から警察に通報したのだが、せいぜい来てチャリンコのお巡りさんが二人ぐらいだろうと思っていた俺は仰天。パトカーがサイレン鳴らして三台もやってきた。
警察が来るまで二人でがっちりホールドしていたメガネ(以下、痴漢)はずっと「やってない、やってない」をくり返していたが、駆けつけた警察官の多さにびびったのか、
「すみません、やりました」と自供。

その後痴漢がどうなったか知らないが、あとで刑事から聞いたところによると、家はまったくの別方向。帰宅途中で見かけた女性があまりにも好みだったため、電車を
乗り換えてまであとを着け、最終的にケツを触ったとのことだった。痴漢には仕事もあり、家には年老いた母親と妹がいるという。痴漢は断罪されるべきだが、母親と
妹が不憫でならない。そんな後先を考えないなんて、やっぱ痴漢って病気なんだなと思った。

最終的に痴漢がどうなったのかは知らないが、そこまでは痴漢の修羅場。
そしてここからは俺と男性の修羅場。


続きます。