原書と解説のレベル
英文解釈教室、透視図その他の参考書で構文把握の能力を鍛えていれば取り組める
構文の解説はほとないが、語句の説明は充実している
英検1級程度の読解力をもつ人が対象とかいているが、入試問題の英文を構文把握できる能力があれば挫折せずに読み通せる。

良しあしは別として、意訳されてて読みやすい訳文になっている。
物語の作者
アメリカ生まれでイギリスに帰化したヘンリージェイムズ。兄のウィリアムはプラグマティズムの祖とされる哲学者。
幼少期からヨーロッパ滞在が長く、ハーバード大学に入学したものの、中退して創作をはじめる。文学活動が本格化したのはヨーロッパに移住してから。
20世紀に確立した心理小説の祖とされる。
3大長編は『鳩の翼』『死者たち』『黄金の盃』で極めて難解だが、芸術的完成度は高く評価されている。
内容
友人の画家が、経済的に困窮した紳士夫妻に懇願されモデルに使ったが失敗だったという話をきかされたことがもとになっている。

肖像画を志す画家のもとに、財産を失った夫妻がやってくる。
本物の real な紳士淑女に見える彼らは、その点を売りにしてモデルに雇ってもらおうとするが、
この認識は、real が unreal より劣ることがありうるつむじまがりの法則に支配される芸術の世界では通用しなかった。

ある序文で、画家はモデルから得たヒントをもとに自分の創造力によって芸術品を完成させるのであって、
真のリアリズムは現実の単なる模写ではないと書いてあるらしい。物語はこの考えを具体的に表現したものだろう。
モナーク夫妻を通じて、画家が上流中産階級の創造力のなさ、多様性に欠けた因習的振る舞いに批判あるいは落胆するところがあるが、
こういったところの背景にも、芸術には型にはまることとは対極にある創造性、個性、多様性をかきたてるものがもとめられるという
考えが存在していると考えられる。