「一般的に国公立大学の入試問題は、これができれば優秀だと判断する基準、
つまり十分条件とまでは言えないものの、このくらいは最低限できてほしいという基準、
つまり必要条件として考えると、良質なものが多いです。
これに対して私立大学の問題は、良問がある一方で、もう少し選抜基準としての妥当性を
備えているものに改善すべきでは、と言いたくなるものもあります。
現代文という科目は、筆者が言っていることを正しく理解しているかどうかを問う科目です。
そして筆者は、ワン・パラグラフ(分の一節)でそんなにたくさんのことを伝えないんです。
だからセンター試験も国公立大学の問題も、基本的に設問数が少ないんです。
しかし、私立大学の中にはかなり多くの問題を設置する大学もあります。
だから、話の本筋ではないことを問うような問題も見受けられるので、改善してほしいな、と思うこともあります」

―今のお話を整理しますと、国立の難関大学ではいい問題が多い、と。

「そうですね。それに、国公立大学の多くが、複数の記述問題を受験生に課します。
たとえば5つの問題を用意して、それぞれ80字とか100字で書かせます。
そうすると、全体で見たときに、生徒の理解力を判断することは比較的容易なんですよ」

―採点者の側からすると、記述の回答を見れば受験生の力量はわかる、と。

「そうです。たとえて言えばバスケットの中にトータルでだいたい何個くらいのりんごが入っているのか、
つまり、この生徒は6個入っている、この生徒は8個入っている、そういう判断はできます。
もっとも、1つ1つのリンゴには大小もありますから、完全な能力測定は無理だとしても、
ある程度はわかるということです。実際、書かせてみると、本当に生徒の力がよくわかります。
60、80、100、120字といった問題を何問も書いたら、なかなかごまかしはきかないんですよ。
私立大学の場合は選択問題が中心なので、もしかたら、勘で選んだものが合っていたりします。
ですから、記述問題による判定ほどの正確さはないと言わざるを得ません。
採点は大変でしょうが、やはりなるべく記述問題で判定してほしいなとは思います」