引退から10年がたつ森下さんは「作品の販売期間があまりにも長すぎる。活動して20年の節目ということもあり、権利を行使するに至った」と心境を語った。【写真映像報道センター・加藤隆寛】

 引退直前の07年に発表したエッセー「すべては『裸になる』から始まって」は映画化もされ、その後もエッセーや小説などを精力的に執筆してきた森下さん。プライベートでは15年に結婚し16年に長男を出産した。
10年の間に大きく変貌した生活環境。それでも「レジェンドAV女優」としていまだに消費され続ける現状に違和感が募っていた。

 疑問が一気に膨らんだのは14年夏。コンビニで売られている成人誌の表紙に自分の名前が大きく掲載されているのを見た時だった。AVメーカーが版元の雑誌で、
森下さんのデビュー作をノーカット収録したDVDが付録だった。「あれ? いまだに名前が使われているの?」。デビュー当時は契約書類が一切存在せず、
すべてが口約束で決まっていく「おおらかな」時代だったのも事実で、再編集版やベスト版などとして作品が2次使用されることにもある程度慣れていた。しかし、
20年近くを経てなお「清純」「幼さ」といった18歳の自分のイメージが量産され続ける現実に直面して複雑な感情にとらわれるとともに、改めて自身の「権利のなさ」を痛感した