押井「ほしのこえに関しては言いたいことが一杯あるんだけど(笑)。
映画というのは一人で作るもんじゃない、いや一人じゃいかんのだ、
一人で映画を作っちゃつまんない。一人なら小説を書けばいい。
映画は人と付き合って、違った物を貰わないといけない。
ほしのこえというのは、壮大な独り言に見えますね。良くでき
てるけど、どこかで見た画になってるし、作品自体もどこかで見た
作品になってる。出来上がりは悪くないけど、
どっかで見たような画でどっかで見たような作品。一人の人間が
パソコンの前で作りましたという以外に評価する点が何があるのかとね。
でも秀作だからそれで良いんですよ。
それはそれでいいんだけど、問題はそれがDVDになって二万本も
三万本も売れてしまったこと。それでアニメスタジオの若いアニメーター
とか演出家とかが動揺していること。「もしかして、出遅れたんじゃないか」
と思っているんですね。スタジオで怒鳴られたり蹴られたりして(笑)
下積みやってシステムの中で我慢しているのに、システムの中に
いない人間がぽんと物作って評判になって売れて、出来上がりが
悪くないからそれで良いじゃんと。
一人で初めて一人で作ってということは、いつでも止められるとおう
ことですね。気楽に見えるだろうけど、物を作るというのは
基本的にしがらみの中で物を得ていく、そういうところを通じ
て現実と出会うわけ。そういうところを考えると、
一人で作るというのは気楽に見えるけど、実はつらいんだよと。
僕も本当はそうしたいんだけど、人に会いたくないから(笑)。

http://www.kyo-kan.net/oshii-ig/report/20030306.html