>>255 のつづき

「こう見えて俺はカタギには手を出さない主義なんだ。でもお前はヤクザみたいなもんだろ?」

「・・・!!」

「かなりのワルだろ? 目を見りゃわかる。お前の目は、人殺しもやりかねない目だ。」

男はそう言いながら、ポケットに手を突っ込み何かを取り出そうとする。

「ち、違う、こ、殺す気はなかったんだ!あれは・・・・事故、事故なんだ!
調子に乗り過ぎただけだ!悪かった!許してくれ!」

激しく動揺し、意味のないことだとわかりつつも思わず謝罪する竜也。

「あ?何のことだかわからねーが、おまえ本当に人殺してたのか?」

「ぁぁあああ・・・・・」

「そうか・・・それなら・・・」

「遠慮なく殺せるな!!!」

男はそう叫ぶと、すかさずポケットから短刀を取り出し、竜也に襲い掛かる。

「うぁああああああああ!!!!」

竜也は悲鳴を上げながら逃げ出すが、男は即座に竜也に追いつき、竜也の襟首を掴む。
次の瞬間、竜也の背中にブスッと短刀が突き刺さる。

「ぐぁあああああああっ!!!」

前のめりで転倒する竜也。ひらひらと地面に落ちていく数枚の紙幣。

男はうつぶせになって倒れている竜也の左手近くで立ちどまる。

「ガキにしちゃあ高級そうな腕時計だな。どうせこれも盗んだ時計だろ?」

「あ、ぐぐぁ・・・」

男は、腕時計を抜き取ってポケットにしまうと、散乱した紙幣を拾い集める。

「この金で最後にいい女でも抱かせてもらうわ。じゃあな」

そう言い残すと、男は遠くに見えるネオン街の方へと歩いていく。

その後ろ姿を竜也はうつろな目で見ていたが、

「おぐぇは・・・・おぐぇは・・・・」

と何かを言おうとしたのを最期に息絶える。

作業着の男が、ネオンに目を細めながらつぶやく。

「刑期は20年、自首すりゃ15年ぐれーか。何にせよしばらく見納めだな・・・」


つづく