>>245 のつづき

店長が呆気に囚われている間に、店を飛び出す竜也。
「こらっ!待て!」と店長も遅れて後を追おうとするが、一瞬引き返して
「佐藤君!警察に電話して!」とアルバイトに通報を頼む。

「泥棒!誰か!捕まえて!」と叫びながら店長は必死に後を追うが、通行人は驚いて立ち止まるだけ。
竜也はぐんぐん引き離し、店長は諦めて立ち止まる。

ひと気のない脇道に入ったところでビルの壁にもたれかかり、腕時計に手をかける竜也。

「俺を追い詰めたとしても無駄だ。俺が店に行ったのは30分前。30分も戻れば、俺の犯行は
なかったことになる。」

そう呟きながらゆっくりと竜頭を回す。
しかし、長針も短針も動かず、空回りするだけで景色の揺らぎも眩暈もない。

「マジかよ!!壊れたのか!?」

焦って何回も竜頭を回すが一向に針が動かない。

「どうなってんだ!まさかこいつルーレットみたいになってるのか!?」

そうこうしているとパトカーのサイレンが聞こえ、竜也のいる脇道に交差した大通りをパトカーが通り過ぎていく。

「やべーな・・・。ひとまずもっと遠くに行かないと・・・」


つづく