「いや!俺があんなきたねぇジジイになるわけがない!俺は悪運がつえーんだ。
今まで警察のご厄介になったこともないし、だいたいこんな幸運を手にしたのにホームレスに
なるなんてありえねー!アイツはよほど馬鹿だったんだ!
仮にアイツが俺だったとしても、歳の違うアイツと俺が重なることはない。現にアイツと俺は同時に存在した。
アイツはアイツ、俺は俺だ!」
気を取り直した竜也は、宝くじ売り場に行き張り出されたロト6の当選番号を控える。
「今日が木曜で毎週月曜と木曜発表だから、1日過去に戻って買えばいいだけだ。」
「人生に必要なのは、運と度胸! オヤジはいい大学入っていい会社入ったのに、事故で早死にして
しまった。勉強なんかしたって意味ねーってことだ!俺はロトを当てて大金持ちになる!」
そう自分を言い聞かせると、竜頭をぐいって回して日付を昨日にする。
軽い立ち眩みのような感覚とともに微妙に周囲の景色が揺らぐ。
「成功したようだな。1日やそこら戻るだけならアイツとは重ならない。さてと・・・」
早速ロトを買おうと財布を取り出すが、財布の中には10円以下の小銭が数枚しか入っていない。
「しまった!! 金がないから換金しようとしてたのを忘れてた!!」
やむをえず、かつて万引きのために通っていた本屋へと足を運ぶ竜也。
「懐かしい。この店は、俺たちが狩りまくったせいで潰れちゃったんだよな・・・。」
「つうか、万引きは楽勝だとしても、どうやって換金するんだ。質屋のオヤジは堅物だし・・・」
店内を見回すと店長が本の搬入、学生風のアルバイトがレジ打ちをやっている。
そこへ「佐藤君、ちょっとこっち来て手伝って」と店長の声。
「こうなったら・・・」
アルバイトがカウンターを離れると、竜也はおもむろにカウンターの内側に入り、
ガッシャンとレジを開ける。
「ついでだからゴッソリもらっていくか・・・」
30枚ほどの札をを握りしめてカウンターを離れようとしたところ、店長に目撃される。
「おい!君!何やってんだ!!」
「何って、、見りゃわかるだろ? 泥棒だよ。」
つづく