ヤフー知恵袋から転載

静岡県では公立高校入試で、どこの高校にもその学校の特色を出すための「学校裁量枠」の制度があり、各校がその裁量により選抜割合を決めています。以下の通りです。

(付属資料3)学校裁量枠において重視する観点及び選抜方法の概要等
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/054/127/r6sairyouwakuitiranhyou.pdf
(以上、ご覧の通り、定員の30%、40%を裁量枠で取っている高校はザラで、静高は静岡県内で最も裁量枠を利用しないで選抜を行なっている高校です)

静高では定員(320人、年によっては280人)の3%程度を「野球」で選抜しますが、県内で裁量枠が最も小さいのです(ちなみに掛川西高では「野球」で4%)。同枠で県内から(県立高校なので県外からは取れない)9〜10名入学しています。

静高野球部は甲子園に出るたび、出場校中、部員数最少を競い、3学年合わせて40人に満たないことがほとんどであり(この夏は特別多く、各学年15人在籍)、私立が県内外からガツガツ集めるのとは全く事情が違っています。大抵は学年13人くらいの年が多いので、共通枠(一般入試)で入ってきて、野球部に入部する生徒が年に3人から多い年では5人くらいいることになります。ベンチ入りする選手のほとんどは裁量枠で入学してきた選手ですが、共通枠にもベンチ入りする優れた選手が入学してきています。この点は見逃されています。

静高野球部の部員数の少なさは理解していただけたと思いますが、その少ない中から東大合格者、国立大学医学科合格者が定期的に出ており、竹内奎人(日本初の医者でプロ野球選手)のような人材が出ています。東大と国立医学科合格者は共通枠での入学がほとんど、若しくは全てで、東大を除く東京6大学などへ進学する選手は裁量枠、共通枠の両方から出ています。

さて、ここからは私の個人的な意見ですが、裁量枠でわずか9人、10人ほどしか採っていないにも関わらず静高の野球が強いのだとすれば、それは一重に伝統によるところが大きいと考えます。

明治時代の旧制一中はどこも野球が盛んでした。その中で現在、毎年甲子園を狙えるところでプレーしているのは、全国で静高だけになりました。それは、過去100数十年間に亘り、学校や父兄が野球部を大事にし、県内の球児たちに「野球をするなら静高で」という目標を持って目指すような部活に育てる努力を続けてきたからです。

県内選りすぐりの選手たちが裁量枠であろうが共通枠であろうが、自発的に静高を目指し続けていなければ、毎年これほど小世帯のチームが甲子園を狙うことはできません(甲子園出場校で静高より部員数が少ないところは毎年0〜3校しかありません)。そこには、新興の私立高校の野球部が良い条件を出して全国から選手を集めるのとは全く違う力学が働いているのです。